肩の痛みで夜も満足に眠れない……。
腕を上げようとするだけで激痛が走り、日々の動作がつらい……。
そんなお悩みを抱えて当院へと訪れる方は、実は少なくありません。
この記事では、いわゆる四十肩・五十肩と呼ばれる「肩関節周囲炎」に注目し、注射治療に焦点を当てて解説します。
肩の痛みで困っている方や、注射に興味があるものの副作用や注意点が気になる方に向けて、できるだけ分かりやすくお伝えできればと思います。
肩関節周囲炎の特徴
肩関節周囲炎とは、肩の関節包や腱板、さらに周辺の組織に炎症や拘縮が生じることで、痛みや可動域の制限が起こる疾患です。
一般的には「四十肩」「五十肩」とも呼ばれ、中高年を中心に多く見られます。痛みが出始めると腕を上げづらくなる、後ろに回すのがつらいといった症状が日常生活に大きな支障を及ぼします。
特に夜間痛に悩まされる方も多く、睡眠不足やストレスを引き起こすケースも少なくありません。
(1) 痛みのメカニズム
肩関節は身体の中でも可動域が広く、複雑な構造をしています。そのため、一部に炎症が起こると他の組織へ波及しやすい特徴があります。
また、痛みをかばって肩を動かさない期間が長くなると、関節包や筋肉が硬くなり、さらに動かしづらい状況が進行しやすくなります。
この悪循環が肩関節周囲炎の長引く痛みの背景に存在するのです。
(2) ペインクリニックでの治療方針
肩関節周囲炎の治療は、痛みの強さや炎症の度合いによって異なります。
ペインクリニックでは「痛みをコントロールしながら可動域を取り戻す」ことを目標とし、薬物療法やブロック注射、リハビリテーションなどを組み合わせて総合的にアプローチします。
症状の原因や経過を見極めつつ、患者さんの生活スタイルや仕事の状況に合わせた治療計画を立てるのが特徴です。
注射治療の種類とメリット
ここからは肩関節周囲炎の症状が強いとき、あるいは可動域を向上させたいときに検討される「注射治療」をご紹介します。
当院では、神経ブロック注射や肩峰下滑液包リリース注射、ハイドロリリース注射、ステロイド注射、ヒアルロン酸注射など、幅広い注射療法を組み合わせながら、患者さん一人ひとりの症状や生活背景を考慮し、医師が最適な治療プランをオーダーメイドで提案いたします。
神経ブロック注射
痛みの伝達経路を遮断
- 肩甲上神経ブロック、腋窩神経ブロック、腕神経叢ブロック、神経根ブロックなどを駆使し、痛みを脳へ伝える経路を一時的にブロック
- 強い痛みが続いている場合に有効で、筋肉の緊張緩和にもつながる
ペインクリニックならではの精度
- エコーやX線透視装置を用いて正確な位置に注射を行う
- 痛みが和らぐことでリハビリや日常生活動作の改善も進めやすくなる
肩峰下滑液包リリース注射
SAB(Subacromial Bursa)をリリース
- 肩峰下滑液包に炎症が生じると、急性期の可動域制限や慢性的な癒着を引き起こす
- エコーガイド下で滑液包を剥がすように注射を行い、拘縮や癒着を解消して可動域の回復を目指す
急性・慢性の両面に有効
- 急性期においては痛みと動きの制限を緩和し、慢性期では固まった組織のリリース効果が期待できる
ハイドロリリース注射
軟部組織の癒着を“水圧”で剥がす
- 肩峰下滑液包に限らず、腱板やファシア(筋膜)などの軟部組織が癒着・拘縮している部分を水圧でリリース
- 痛みの原因となる組織同士の癒着を取り除き、動きを滑らかにする
幅広い適応範囲
- 肩以外にも首や腰などのトラブルに応用されることがあり、複数の部位に痛みを抱える方にも有効な場合がある
ステロイド注射
強力な抗炎症作用
- 炎症を起こしている患部へ直接ステロイドを届けるため、痛みが早期に軽減されやすい
- 急性期の強い痛みを短期間で抑え、リハビリへの移行を促進
全身への影響が比較的少ない
- 経口薬よりも局所投与のため、副作用の範囲が限られる
- ただし多用すると腱が弱くなるリスクなどがあるため注意が必要
ヒアルロン酸注射
関節の潤滑油としての働き
- 関節内の滑液を補うことで、肩の可動域をスムーズにする
- 炎症を緩和し、痛みの原因となる摩擦を軽減
長期的なケアに向いている
- ステロイドと比べると即効性はやや低いが、副作用が少なく繰り返し注射しやすい
- 痛みが落ち着いた状態を維持しながらリハビリを続けやすい
副作用・注意点と効果を最大化するコツ
本記事では注射治療の種類を中心に紹介してきましたが、下記のような副作用やリスクも考慮する必要があります。
注射治療の副作用とリスク
共通リスク
- 注射部位の感染や内出血のリスク(針を使うためゼロにはならない)
- 施術直後に軽い痛みや腫れが出る場合がある
神経ブロック注射
- 一時的なしびれや脱力感が出ることがある
肩峰下滑液包リリース・ハイドロリリース
- 手技に伴う一時的な違和感や軽度の炎症反応
ステロイド注射
- 血糖値の上昇や腱の脆弱化がまれに問題となる
ヒアルロン酸注射
- アレルギー反応はごくまれだが、注射部位の腫れや痛みが一時的に起こる場合あり
治療効果を高めるためのポイント
適切なリハビリの導入
- 痛みが和らいだタイミングで、肩周囲のストレッチや筋力トレーニングを行う
- 拘縮を防ぐためにも、無理のない範囲で日々少しずつ動かすことが大切
生活習慣の見直し
- デスクワークでは1時間に一度は軽く肩を回すなど姿勢を変える
- 肩を冷やさないよう心がけ、血行促進に努める
定期的な受診と状態確認
- 治療効果や可動域の変化を医師がチェックし、必要に応じて別の注射法やリハビリメニューを提案
- 痛みが長引くほど回復が遅れる可能性があるため、早期相談が望ましい
まとめ
肩関節周囲炎は、本人にしか分からないつらい痛みが長期化しやすい疾患ですが、適切な注射治療を行い、症状が落ち着いた段階でリハビリをしっかり取り入れることで、日常生活への負担は大きく軽減されます。
ペインクリニックでは、神経ブロックや肩峰下滑液包リリース注射、ハイドロリリース注射、ステロイド注射、ヒアルロン酸注射など、多彩な注射治療を組み合わせながら、患者さんの症状や生活背景に合わせて安全性と効果を両立する最適な治療計画を個別にご提案しています。
「痛みが続いてつらい」「夜間痛を少しでも和らげたい」という方は、ぜひ一度ご相談ください。
放置して悪化する前に、早めの対応が回復への近道です。自分に合った治療法を見つけ、再び肩を楽に動かせる日常を取り戻しましょう。