トリガーポイント注射とは
トリガーポイント注射は、痛みを取る治療の一つで、注射療法に分類されます。
医師が痛む部位を中心に丁寧に触診し、筋硬結(筋肉が固くなっている部分)を触れる部位(トリガーポイント)に注射を行います。
トリガーポイントには圧痛を伴う場合が多いです。
トリガーポイント注射の目的は、痛みの緩和にあります。
薬液による薬理学的作用(局所麻酔作用、消炎作用)のほか、筋肉と筋膜の間にスペースができることによる鎮痛効果も期待できます。
薬物療法やリハビリテーションなどで症状が改善しない痛みや、痛み自体が強力で生活の質が著しく低下した方に適しています。
トリガーポイント注射の方法
トリガーポイントは痛む部位に直接打つため、痛い部位を露出する必要がございます。首肩周りであれば座位の姿勢をとって頂き、医師が後方から注射を行います。腰周りであれば、ベッド上でうつ伏せの姿勢で注射をします。
当院ではトリガーポイント注射に用いる針は、非常に細いもの(25ゲージ)を使用しています。採血用には通常21ゲージの針を使用するので、それよりもかなり細いサイズになります。
皮膚を貫く際に、チクっと痛み、薬液が入る際にも軽い痛みを感じる場合があります。
当院ではトリガーポイント注射に、ネオビタカイン®︎を使用しています。
ネオビタカイン®︎は、局所麻酔薬と消炎鎮痛薬の合剤で、トリガーポイント注射に広く用いられています。局所麻酔薬が含まれているため、極量に至らないよう5mlを超える量の薬剤は使用していません。
トリガーポイント注射の合併症
トリガーポイント注射にはいくつか注意したい合併症がありますので紹介します。
軽微な合併症
- ブロック針を刺したところからの軽い出血
- 皮下出血、あざ
- 消毒薬に対するアレルギー(皮膚の発赤)
重篤な合併症
- 局所麻酔中毒(10000例に1.2~11例程度)
- 神経障害(0.06%)
- 薬液に対するアレルギー
- じんましん(サリチル酸に対する薬剤不耐症)
当院では、注射後にご気分が優れないときには処置室のベッドでお休み頂いております。ご自宅に帰られて何か異常を感じた際には、当院までご連絡をお願いしています。
ハイドロリリースについて
トリガーポイント注射と同様のコンセプトで、
トリガーポイント注射は医師の触診を元にポイントを見極めて注射
トリガーポイント注射は施行する医師の技術力の差はあまりでませ
残念ながら健康保険の適応ではないため、
トリガーポイント注射Q&A
Q:トリガーポイント注射はその場しのぎの痛み止めなんじゃないの?
A:トリガーポイント注射は筋肉や筋膜が由来になった痛みに用いられる治療法です。筋硬結がある部位では、神経の活動が過剰になっており痛みをより感じやすくなっています。局所的に炎症も起きていると考えられますので、トリガーポイントの薬理学的な作用を期待して注射を打っています。一方で、筋肉と筋膜の間に癒着を形成していたり、「発痛物質」が溜まっているため痛みが出ている機序も存在しています。トリガーポイント注射は癒着を剥がす作用(筋膜リリース作用)、発痛物質を洗い流す作用(ウォッシュアウト効果)があるため、痛みを根本的に治療する効果があると考えられます。
Q:ブロックはくせになるって聞きましたが、どうですか?
A:トリガーポイント注射には精神的依存も肉体的依存もありません。一度打ち始めるとずっと打っていかなければならないということもありません。単発の注射で治療が終了することは稀ですが、複数回繰り返す場合でもトリガーポイント注射を続けていくと徐々に痛みの強さや頻度は減少していくことが多いです。痛み自体が弱まっていれば、注射を行う頻度自体を減らしていくことができます。実際に当院では、ある程度トリガーポイント注射を継続したところでほとんどの患者様が治療を卒業しています。注射への反応が悪い痛みであった場合には、注射を無理に継続することはせず、別の治療方法をご紹介しています。
Q:何回打てば治るの?
A:トリガーポイント注射の継続期間は患者様によってまちまちですので、症状次第と考えます。当院でトリガーポイント注射を行う場合、通常は3〜5回程度継続して行い、症状をみながらそのまま継続するかどうか再検討しています。経験からは、約半数の方が3〜5回で注射を卒業しています。長期でトリガーポイント注射の継続が必要になっている場合や、注射への反応が悪い場合は他の治療法をご紹介しています。トリガーポイント注射は安全性が非常に高いため、症状が強い場合には連日注射を継続することもできます。
Q:血液サラサラの薬を飲んでるけど、トリガーポイント注射はできる?
A:他の深部ブロックと異なり抗血小板薬、抗凝固薬を服用されている方へも安全にトリガーポイント注射を行うことができます。ごく稀に筋肉内血腫を起こすことがあるため、注射のあとが腫れたり痛む場合には注射を継続できないことがあります。
Q:費用はどれくらい?保険は効くの?
A:健康保険の適応ですので、安心してお受けになれます。トリガーポイント注射の保険点数は80点(1点=10円)となります。3割負担の方では、自己負担額は240円です(その他、診察費、薬剤費がかかります)。