突然襲ってくる腕のしびれ、指先の違和感、首から肩にかけての痛み—。これらの症状でお悩みの方は少なくありません。
実は、これらの症状の多くは「頚椎」に原因があることをご存知でしょうか?
頚椎の痺れとは
頚椎由来のしびれは、現代社会において急増している症状です。特にデスクワークやスマートフォンの使用時間が増加した現代では、首への負担が年々大きくなっています。このしびれの特徴は、単なる一時的な違和感ではなく、神経の圧迫や炎症による持続的な症状であることです。
なぜ頚椎の問題で痺れが起こるのか
頚椎には、脊髄という重要な神経の束が通っており、そこから分岐する神経根が各部位へと伸びています。
神経根の主な支配領域は以下の通りです
- C5神経根:肩から上腕の外側部
- C6神経根:前腕外側から親指側
- C7神経根:中指から環指
- C8神経根:小指側
これらの神経は、腕や手の感覚、筋肉の動き、痛みや温度感覚など、日常生活に欠かせない多くの機能を担っています。
この神経が圧迫されることで、その支配領域に一致した症状が出現することになります。
主な原因疾患と病態
頚椎椎間板ヘルニア
頚椎椎間板ヘルニアは、最も代表的な原因の一つです。椎間板という、骨と骨の間にあるクッションのような組織が後方に飛び出すことで、神経を圧迫する状態を指します。
初期段階では、椎間板の内部に小さな亀裂が入ることから始まります。この段階では、軽い違和感程度の症状しか現れないことも多く、多くの方が見過ごしてしまいます。しかし、徐々に亀裂が大きくなり、ついには髄核と呼ばれる内部の柔らかい組織が後方に飛び出してしまいます。
頚部脊柱管狭窄症
頚部脊柱管狭窄症は、脊髄が通る管(脊柱管)が狭くなることで起こる深刻な病態です。加齢による変化が主な原因ですが、先天的に脊柱管が狭い方も少なくありません。この疾患の特徴的な点は、単一の神経根だけでなく、脊髄全体が圧迫を受けることです。そのため、両手のしびれや歩行障害など、より広範囲な症状が出現します。
特に注目すべきは、この疾患では首の後屈(上を向く動作)で症状が悪化することです。これは、後屈時に脊柱管がさらに狭くなるためです。進行すると、階段の上り下りが困難になったり、足がもつれたりするような歩行障害(脊髄症状)が現れることがあります。また、手先の巧緻運動障害も特徴的で、箸が使いづらい、ボタンが留めにくいといった症状が両手に現れることがあります。
頚椎症
頚椎症は、加齢に伴う変性変化によって引き起こされる疾患です。
年齢とともに、椎間板の水分量が減少し、その高さが低下していきます。それに伴い、骨と骨の間隔が狭くなり、神経が通る空間が徐々に狭くなっていきます。さらに、体がこの変化に適応しようとして骨棘という余分な骨が形成されます。この骨棘が神経を圧迫することで、様々な神経症状が引き起こされます。
症状の進行と予後
神経の障害は、その程度によって症状の現れ方が大きく異なります。
初期症状として最も多いのは、手指のしびれや違和感です。朝起きた時に手がむくんだような感覚があったり、指先の感覚が鈍くなったりすることがよくあります。
症状が進行すると、しびれの範囲が広がったり、持続時間が長くなったりします。さらに進行すると、箸を使う、ボタンを留めるといった細かい手の動作が困難になってきたり、物を落としやすくなったりします。
重症例では、歩行時のバランスが悪くなったり、足の動きがぎこちなくなったりすることもあります。
- 発症からの期間
- 年齢
- 基礎疾患の有無
- 神経障害の程度
- 生活環境や職業
受診のタイミング
以下のような症状がある場合は、早急な医療機関の受診をお勧めします
- しびれが持続的に続く場合
- 症状が徐々に悪化している場合
- 手の脱力が顕著な場合
- 歩行に影響がある場合
- 両側の手足に症状が出現した場合
- 排尿や排便の異常が現れた場合
特に最後の2つの症状は、重大な神経の障害が疑われるため、緊急性が高いものとして考えられています。
まとめ
頚椎由来のしびれは、その原因や進行状況によって予後が大きく異なります。早期発見・早期診断が、より良い治療成績につながることは間違いありません。
たとえ軽い症状であっても、持続する場合は診察時にご相談ください。
また、当院では頚部に詳しい理学療法士がリハビリテーションを行っておりますのでご安心ください。