肩の痛みや動かしにくさに悩まされていませんか?

「腕が上がらない」

「夜間に痛みが強くなる」

このような症状があれば、それは五十肩かもしれません。

本記事では、五十肩になりやすい方の特徴から予防法、そしてペインクリニックでの効果的な治療法までを詳しくご紹介します。

1.はじめに:五十肩(肩関節周囲炎)とは?

「五十肩」という言葉を耳にしたことがある方は多いでしょう。

これは通称であり、医学的には「肩関節周囲炎(かたかんせつしゅういえん)」と呼ばれる疾患です。

 

主に40代から60代の方に多く発症し、肩の痛みと動きの制限(可動域制限)を主な症状とします。朝起きたときや夜間の痛み、腕を上げようとすると激痛が走る、後ろに手が回せないなど、日常生活に大きな支障をきたすことが特徴です。

 

実は、この五十肩は決して珍しい病気ではありません。日本人の約10人に1人が一生のうちに経験するとも言われています。しかし、適切な対処をせずに放置してしまうと、症状が長期化し、日常生活やお仕事にも大きく影響を及ぼしかねません。

 

この記事では、五十肩になりやすい人の特徴、その原因、効果的な予防法、そしてペインクリニックでの最新治療法について詳しく解説します。この情報が、あなたやご家族の健康維持に役立つことを願っています。

 

2.セルフアセスメント:あなたの症状をチェック

五十肩は誰にでも起こる可能性がありますが、特になりやすい方の特徴があります。

年齢(最大の要因)

五十肩が「五十肩」と呼ばれる理由の一つは、50歳前後に多く見られることからです。具体的には40代後半から60代前半にかけての発症が最も多く、これは加齢に伴う組織の変性が主な原因と考えられています。年齢を重ねるにつれ、肩の関節を包む組織の柔軟性が低下し、炎症や癒着が起こりやすくなるのです。

性別

統計的に見ると、女性のほうがやや発症率が高い傾向にあります。これには女性ホルモンのバランス変化や、骨格・筋肉量の違いが関係していると考えられています。特に更年期前後の女性は注意が必要です。

生活習慣

運動不足・肩を動かさない生活

デスクワークが中心で、日常的に肩を動かす機会が少ない方は要注意です。肩関節周りの血行不良を招き、筋肉や腱の柔軟性が低下しやすくなります。

デスクワーク・長時間の同じ姿勢

パソコン作業やスマートフォンの長時間使用など、同じ姿勢を長時間続けることで、肩周りの筋肉が緊張状態になり、血行不良を引き起こします。

猫背などの不良姿勢

前かがみの姿勢や猫背は、肩関節に過度な負担をかけ、炎症のリスクを高めます。特に長年の習慣による姿勢の悪さは、知らず知らずのうちに肩への負担を蓄積させていきます。

糖尿病

糖尿病患者さんは、一般の方と比べて五十肩を発症するリスクが2~4倍高いとされています。これは血行障害や組織の糖化(たんぱく質が糖と結合して硬くなる現象)が関与していると考えられています。

恒常性機能亢進症/低下症

甲状腺ホルモンの異常は、筋肉や結合組織の代謝に影響を与え、五十肩のリスクを高める可能性があります。

3.なぜ五十肩になるのか?考えられる原因

肩関節は、上腕骨(じょうわんこつ)と肩甲骨(けんこうこつ)が接合する部分で、この関節を包む「関節包(かんせつほう)」と呼ばれる袋状の組織があります。また、肩を安定させ動かすための「腱板(けんばん)」と呼ばれる筋肉や腱の集まりも重要な役割を果たしています。

 

五十肩では、これらの組織に炎症が生じ、その後、組織が硬くなったり、互いに癒着したりすることで、痛みや動きの制限が起こると考えられています。

特に加齢による組織の変性や、微小な損傷の蓄積が、この炎症と癒着のプロセスを引き起こす要因とされています。

血行不良

長時間同じ姿勢でいることや、運動不足、ストレスなどにより、肩周りの血流が悪くなると、組織の修復が遅れ、炎症が起きやすくなります。また、血行不良は痛みの感覚を強める原因にもなります。

その他の要因

自己免疫反応(体が自分自身の組織を異物と認識して攻撃する現象)が関与している可能性も研究で示唆されています。また、心理的なストレスや、肩を保護するための無意識の動作制限なども、症状を長引かせる要因になることがあります。

4.五十肩の主な症状と進行プロセス

五十肩は一般的に、以下の3つの段階を経て進行し、その後回復に向かうと考えられています。各段階の特徴と目安となる期間をご紹介します。

疼痛期(急性期)

主な症状

  • ある日突然始まることが多い強い痛み
  • じっとしていても痛む(特に夜間や朝方に痛みが強くなる傾向)
  • 痛みのために肩を動かすことが困難になる
  • 痛みで睡眠が妨げられる

期間の目安: 数週間~数ヶ月

この時期は炎症が強く、肩関節周囲の組織が敏感になっています。無理に動かすと痛みが増強する可能性があるため、過度な運動は避けるべき時期です。

拘縮期(慢性期)

主な症状

  • 痛みはやや軽減するが、肩の動きが著しく制限される
  • 腕を上げる、背中に手を回す、髪を洗うなどの日常動作が困難になる
  • 「凍結した肩」という表現がふさわしい状態

期間の目安: 数ヶ月~1年程度

この段階では、炎症による急性の痛みは和らぎつつありますが、関節包や周囲の組織が硬くなり、癒着が進行することで動きが制限されます。日常生活への支障が最も大きくなる時期です。

緩解期(回復期)

主な症状

  • 徐々に痛みが軽減する
  • 少しずつ肩の動く範囲(可動域)が改善していく
  • 日常生活動作が楽になってくる

期間の目安: 数ヶ月~数年

自然に回復に向かう時期ですが、適切なリハビリテーションを行うことで回復を早めることができます。ただし、完全に症状がなくなるまでには時間がかかり、中には若干の可動域制限が残る場合もあります。

※注意点

五十肩と似た症状を示す疾患には、腱板断裂、石灰沈着性腱板炎、肩関節周囲の骨折、肩関節の変形性関節症などがあります。

これらは治療法が異なるため、自己判断で「これは五十肩だ」と決めつけず、専門医による正確な診断を受けることが非常に重要です。

5.日常生活でできる!五十肩の予防法

五十肩は完全に予防することは難しいですが、日常生活での工夫によってリスクを減らすことができます。以下の予防法を意識的に取り入れてみましょう。

過度な運動・ストレッチ習慣

肩周りの筋肉を適度に動かし、血行を促進することが重要です。特に以下のような簡単なエクササイズを日常に取り入れると効果的です。

  • 肩回し: 両肩をゆっくりと前回し10回、後ろ回し10回行います。
  • 振り子運動: 机などに手をついて上半身を前傾させ、反対の腕を前後・左右・円を描くように自然に振ります。
  • 壁這い運動: 壁に向かって立ち、指先で壁をなぞるように少しずつ腕を上げていきます。

※これらのエクササイズは痛みがない範囲で行うことが大切です。痛みを感じる場合は無理をせず、医師やリハビリの専門家に相談しましょう。

正しい姿勢を意識する

デスクワークが長い方は、特に姿勢に注意が必要です。

  • モニターは目線かやや下になるよう高さを調整する
  • 椅子は背筋が伸びる高さに調整し、背もたれを活用する
  • 肘掛けを利用して肩の負担を減らす
  • 1時間に1回は立ち上がり、肩を軽く回すなどして姿勢をリセットする

猫背は肩への負担を増やす大きな要因です。普段から胸を開き、肩甲骨を寄せるイメージで歩くことを心がけましょう。

自宅でのケア方法については以下の記事をご覧ください。

6.痛みが続くならペインクリニックへ|五十肩の効果的な治療法

自己ケアを続けても改善が見られない場合や、強い痛みがある場合は、専門医療機関への受診をお勧めします。特にペインクリニックは、五十肩の痛みに対する専門的な治療を提供しています。

なぜペインクリニックなのか?

ペインクリニックは「痛みの専門家」です。五十肩のような複雑な痛みに対して、以下のような強みを持っています

  • 痛みのメカニズムを深く理解し、正確な診断が可能
  • 痛みの原因や程度に合わせた多様な治療法を提供
  • つらい急性期の痛みを素早く和らげるための専門的な技術を持つ
  • 薬物療法から注射療法、リハビリテーションまで、総合的なアプローチが可能

ペインクリニックで行う主な治療法

薬物療法

  • 消炎鎮痛薬(内服薬・外用薬): 炎症と痛みを抑える薬
  • 神経障害性疼痛治療薬: 神経の痛みに効果的な薬剤
  • 筋弛緩薬: 緊張した筋肉をほぐす薬

それぞれの患者様の症状や全身状態に合わせて、最適な薬剤を選択します。

注射療法(ペインクリニックの強み)

注射療法は、ペインクリニックの大きな特徴であり、五十肩の痛みを効果的に軽減することができます。

  • ヒアルロン酸注射: 関節内の潤滑を改善し、炎症を抑える作用があります。
  • ステロイド注射: 強い抗炎症作用があり、疼痛期の激しい痛みを和らげるのに効果的です。関節内や滑液包内など、症状に合わせて適切な部位に注入します。
  • 神経ブロック注射: 肩の痛みに関与する神経の伝達を一時的に遮断することで、強力に痛みを抑えます。同時に血行も改善するため、組織の治癒も促進します。特に夜間痛が強い患者さんに効果的です。
  • ハイドロリリース(筋膜リリース注射): 生理食塩水などを注入して癒着した組織を剥がし、可動域の改善を図ります。拘縮期の患者さんに効果的な治療法です。

当クリニックでは、超音波エコーガイド下で注射を行うことにより、より正確に目的の部位に薬剤を届けることができます。これにより、治療効果を最大化し、副作用を最小限に抑えることが可能です。

リハビリテーション(理学療法)

五十肩の回復には適切なリハビリテーションが欠かせません。
当クリニックでは、患者さん一人ひとりの状態に合わせた以下のアプローチを提供しています。

運動療法

症状の段階に応じた適切なエクササイズを行うことで、肩の機能回復を促進します。以下は一例となります。

疼痛期(急性期)

  • 振り子運動: 前かがみの姿勢で腕を自然に振り、負担をかけずに可動域を維持
  • 肩甲骨運動: 肩甲骨周囲の筋肉を動かして血行促進

拘縮期~回復期

  • 自動介助運動: 健側の腕で患側を支えながら動かし、可動域を徐々に広げる
  • 壁這い運動: 壁に指をつけて少しずつ腕を上げ、さまざまな方向の動きを改善
  • 抵抗運動: ゴムバンドなどを使って筋力を段階的に回復
徒手療法

セラピストの手技によって肩の機能改善を図る治療法です。

  • 関節モビライゼーション: 関節の動きを制限している組織の柔軟性を高める手技
  • 軟部組織テクニック: 筋膜リリースやトリガーポイント療法で筋肉の緊張を緩和
  • 肩甲骨モビライゼーション: 肩甲骨の動きを改善し、肩関節全体の機能向上を促進

当クリニックでは、各患者さんの症状に合わせてこれらの治療法を組み合わせた個別プログラムをご提案します。適切なリハビリテーションにより、早期の機能回復と日常生活への復帰をサポートします。

7.まとめ

五十肩(肩関節周囲炎)は、40代から60代を中心に多くの方が経験する疾患です。年齢、性別、生活習慣、過去の肩への負担、基礎疾患などが複合的にリスクを高めます。

発症を予防するためには、日頃からの適度な運動、正しい姿勢の維持、体(特に肩周り)を冷やさないこと、そして肩への過度な負担を避けることが重要です。

もし、肩の痛みや動きにくさを感じたら、「様子を見よう」と放置せず、早めに痛みの専門家であるペインクリニックにご相談ください。特に急性期の強い痛みがある場合は、専門的な治療によって早期に痛みを軽減できる可能性があります。

五十肩は時間とともに必ず良くなる病気ですが、適切な治療によってその期間を大幅に短縮できることが分かっています。痛みと不自由さから早く解放され、充実した日常生活を取り戻すために、ぜひ専門医療機関の力を活用してください。

当クリニックでは、最新の医学的知見に基づいた五十肩の治療を提供しております。お悩みの方は、まずはお気軽にご相談ください。